アイリッシュと共に1

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飛行機がちょうどバンクーバー空港に近づいた時、上空から見えた街は一面、真っ白であった。十二月初旬、冬のカナダに降り立つ直前である。

バ ンクーバー空港は、今までのどこの国の空港よりも、シンプルで落ち着いた雰囲気がある。その大自然をイメージした空間(階段の横には、滝のように流れる水 のアートがあった)は、いかにもカナダらしいと思った。これまでの空港というのは大抵、大都市であったが、多くの人が忙しそうにしていたし、騒がしいもの だった。本来、空港とはそんな所でもあるのかもしれないが、このバンクーバー空港の人間はどこか落ち着いている。というよりは、この品のある空間が、人を 落ち着かせているのだろう。

こ の旅で、僕が最も苦手としていた入国審査官であるが、若いそのお兄さんは、真冬の格好をしていた僕に対して、「滞在中、スノーボードはするのか? お前は 上手か?」と、親しげに語りかけてくるのだった。僕は、そんなウィンタースポーツを楽しむ目的も余裕もなかったから、「残念ながら今回は金がなくて、出来 そうにない」と、答えると、「じゃあ、何をするんだ? 女の子の尻でも追いかけるのか?」と、問いかけてくるのであった。入国審査という厳重な場で、こう いうユーモアのある審査官に出会う確率は非常に少ないといっていいだろう。外国人を歓迎する気持ちもさらさら感じられない表情の審査官もいれば、パスポー トをちゃんとこちらの手に渡して返さない審査官もいるのである。しかし、ごく稀に、今回のような型にはまらない柔軟で温厚な審査官もいらっしゃる。僕は、 とても新鮮な気持ちで入国を果たした。これ以降、この街でたった数秒でも言葉を交した人達の親切心とフレンドリーな人情は変わらなかった。

気 分良く、空港から外のバスターミナルに出た時、震えるほどの寒さが襲ってきた。スキーやスノーボードの板を抱える欧米人の姿が目立つ。さすがは、本場であ る。それを目的にこの国にやってくる者が大勢いるなかで、約一名、この街で一体何をしようかと考えながらバスを待つ者がいた。

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